インプラントの基礎知識

01:インプラントで健康保険は使えますか?

 インプラントは保険が適応されません。歯科医院に限らず、医療において健康保険が適用されないのは実は特殊なケースではありません。

 美容整形の類の治療は一切健康保険が適用されないですし、歯科医院の治療で例えるならホワイトニングや矯正治療も同様に保険外です。

何故インプラントには健康保険が使えないのですか?

 虫歯や歯周病治療では健康保険が適用されます。では健康保険が適用される治療とはどんな治療なのでしょうか。そのポイントとなるのは2つです。

 ひとつは身体の健康のために必要な治療であること、もう一つは最低限の治療であることです。

 健康保険が適用されるのは、これら2つの条件を満たしている治療です。 ではこれをインプラント治療に当てはめて考えてみましょう。
 インプラント治療は歯を失った際に行う治療ですから、「身体の健康のために必要な治療」という条件は満たしています。
 しかし「最低限の治療であること」は満たしておりません。インプラント治療が審美性も兼ねているからです。
 健康保険の治療は「最低限」しかカバーされません。そのため歯を失った際の最低限の治療は取り外しの「入れ歯」となり、入れ歯治療には健康保険が適用されます。

02:<インプラントの健康保険適用>条件を満たせば、健康保険でインプラントが出来るって本当ですか?

 平成24年4月より、病気や事故などで広範囲にわたって顎の骨を失ってしまった場合に、国が定めた条件を満たせば、インプラント義歯治療(※)が保険適用されるようになりました。しかしながら、適応範囲が限られており、現状では一部の大学病院のみの医療機関でしか適用となっておりません。一般的な、歯周病や虫歯など失ったケースでは、適用となりません。
 ※「インプラント義歯治療」の正式名称

インプラント義歯のために必要な手術を「広範囲顎骨支持型装置埋入手術」、それに装着する補綴物(義歯)を「広範囲顎骨支持型補綴」という。
  • 腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気や、事故の外傷などによって、広範囲にわたり(※)顎の骨を失ってしまった状態
  • もしくはこれらが骨移植によって顎の骨が再建された状態であること
  • 医科の保険医療機関の主治医によって、先天性疾患(うまれつきの病気)と診断され、顎の骨の1/3以上が連続して欠損している状態
  • 顎の骨の形成不全であること
※適用となる範囲について
〔上顎の場合〕
顎の骨の1/3以上が連続して欠損している、もしくは上顎洞、または鼻腔へと繋がっていると診断されていること
〔下顎の場合〕 顎の骨の1/3以上が連続して欠損している、もしくは腫瘍などの病気によって下顎を切除したと診断されていること

(インプラントネットHPより引用)

対象となる人がほとんどいないんじゃないですか?

 このような限られたケースにのみ保険適用され、歯周病や加齢による顎の骨の吸収(痩せ細った)などによるものは対象外となっています。

 厚労省も、ほとんど対象となる人がいないにも関わらず、先端医療を保険に導入したのは、いかにも「厚労省も国民のためにやっていますよ!」とアピールしたかったためではないでしょうか?

03:<インプラント保険(民間保険)>生命保険や損害保険でも出来るって聞きましたが?

 インプラントが健康保険適用になるケースは極まれと言ってもいいです。ただし、健康保険の適用内でなくとも、自主的に入っている民間の生命保険等で一部負担してもらえる可能性もあります。詳しくは保険会社や歯医者さんに尋ねてみるといいでしょう。

 最近ではインプラント治療に対応した保険を販売する保険会社が増えているので、これから生命保険等に加入する予定のある方は、保険会社の方に詳しく聞いておくといいかもしれません。

04:インプラント保険(インプラント10年保証)

 『インプラント10年保証システム』はサービス提供会社であるガイドデント社が第三者として保証をバックアップし、患者さんのインプラント治療を長期的にフォローすることで、患者さんにより安心して治療を受けて頂けます。
 患者さんの口腔内の環境変化による再治療や転居等ライフスタイルの変化によって転院が必要になった際もガイドデント社がスムーズに対応いたします。

 インプラント治療を受ける患者さんに、安心と安全をカタチにして提供する『インプラント10年保証システム』が皆様のインプラント治療のサポートの1つになれば幸いです。

05:インプラントの安全性

 インプラント治療は、顎の骨を削って金属のネジ(インプラント)を埋め込むという手術を伴う治療です。「手術」というと恐怖感を感じる方や、その安全性について不安に思う方も多いのではないでしょうか。

手術だけど大丈夫?

 インプラントの手術は、通常、局所麻酔をして行います。
 歯科医院によっては、恐怖心が強い方に対して「静脈内鎮静法」などを併用して、眠ったような状態で手術を受けることも可能です。
 いずれにしても、通常、手術中はほとんど痛みを感じることはありません。
 術後の痛みに関しても、治療内容による差や個人の感じ方に差はありますが、抜歯を行った時と同じ程度と言われています。
 手術のために入院する必要もありませんし、翌日から通常の生活を送ることができます。

インプラントのアレルギーは?

 インプラント体は、骨折したときなどに整形外科で治療する際に使用されるボルトやナットと同じ素材である、チタンで作られています。
 そこから分かるように、チタンはアレルギーなども起こりにくく(10万人に一人くらい)、体に調和する素材です。

インプラントってどれくらいもちますか?

 インプラント治療を受けた後、適切なメンテナンスを行うことが出来て尚、全身状態が極端に悪化しなければ、半永久的に第2の永久歯としての機能を維持することも不可能ではありません。

インプラントのリスクはないの?

 手術・治療にリスクが全くない訳ではありません。

 事前の検査や、患者さんの全身状態の確認が不十分であった場合など、適切な施術が行われなかった結果、再手術が必要になる事例も多々見てきました。しかし、必然的原因によっておこるリスクは事前に可及的に排除しておく必要があります。そのためには、十分な検査、診査、診断、シミュレーション等は必須です。万が一チタンによるアレルギーが出た場合は偶然的要素で、防御出来ないリスクです。今はまだチタンアレルギーの正確な検査が出来ないのが現状です。

06:<インプラントの種類> インプラントはどれも同じ?

 インプラント治療後に、何らかの理由で取り付けたアバットメントや上部構造を外すこともあります。また、引越しや閉院などで治療を受けた歯科医院へ通えなくなることや、外出先でアクシデントが起こることなども考えられます。治療後の万が一に備えて、自分のお口の中に入れる「インプラントのメーカー名・種類」などを聞き、それがどの程度普及しているのか確認されておくことをお勧めします。あまり普及していないインプラントで治療を受けると、後に治療が難しくなることもあります。

 ちなみにStraumann(ストローマン)社Nobelbiocare(ノーベルバイオケア)社Astra(アストラ)社、この3社で世界の約2/3の市場を占有しています。この3メーカーであれば、まず間違いありません。施術する前に、どこのメーカーの何というインプラントかを聞いておく必要があります。

07:インプラント専門医って何ですか?

 「公益社団法人日本口腔インプラント学会」は正会員歴5年以上で、インプラントの知識と技術を有し、認定資格条件を満たしたうえで専門医試験に合格した正会員と定義しています。

 メーカー主体の利益目的の専門医や、仲間うちで作ったグループの専門医は十分に真意を確かめる必要があります。社会的、学術的に認められている学会が認定した専門医かを見極めなくてはなりません。

「公益社団法人日本口腔インプラント学会」以外の専門医が存在するの?

 他にもあります。公益社団法人 日本顎顔面インプラント学会一般社団法人日本インプラント臨床研究会のように公的法人の団体やOJ(Osseointegration Study Club of Japan)UCLAインプラントアソシエーションジャパン等、口腔保健協会内の組織は、歴史もありしっかりしています。これらの学会の専門医選定基準は安心できると思われます。

08:インプラント学会ってなんですか?

 公益社団法人日本口腔インプラント学会の事です。

 仲良しグループが適当に付けている場合もありますので「(最新とか近代)〇△□インプラント学会」は要注意です。活動内容や実績等をよく調べる必要があります。特に法人格のない団体は要注意です。

09:インプラントの治療期間を教えて?

 インプラントの治療は、順番に「インプラント埋め手術」、「義歯(歯冠)の作製と装着」、「メインテナンス」と続きます。

 インプラント治療においては、インプラントを顎の骨に埋入する手術(インプラント埋入手術)を受けなくてはなりません。 インプラント治療の方法として2回法が選択された場合、インプラント埋入手術と、インプラントの上部の粘膜を切開する手術の2回の手術が必要です。 骨の造成が必要な場合は、インプラント埋入手術の前に別個におこなう方法と、インプラント埋入手術と同時におこなう方法があります。

 インプラント埋入した後、一定期間を経て、型を採ってインプラントの上に付ける義歯(歯冠)の作成をおこない、義歯(歯冠)を装着します。

インプラントのメインテナンスって必要ですか?

 インプラント治療が終了した後、定期的に治療を受けた歯科医院に通院し、インプラント治療を受けた部位を含めて問題が無いかを診てもらうことを「メインテナンス」と呼びます。 治療を受けた部位に何も不具合が無い場合も、定期的に通院して診てもらうこと(メインテナンス)は、治療した状態を長期良好に維持するために大変重要です。
(日本口腔インプラント学会HPより一部引用)

10:治療回数はどれくらいですか?

 一回法と二回法があり骨の状態や全身状態により適応は変わってきます。目安としては、
  • 一回法 通院回数…1~2回、1日~2週間
  • 二回法 通院回数…4~6回、3~7ヶ月
  • 上部構造(人工歯)の作製にかかる期間 通院回数…3~6回 通院期間…1~3ヶ月
 手術方法の違いや、顎の骨を増やす手術が必要かどうかなど、患者さんの状態によって、期間が大きく変わります。
 その後もメインテナンスに定期的な通院が必要です。

11:<インプラント矯正>インプラント矯正って何ですか?

 「インプラント矯正」は、顎の骨に小さなネジ(ミニスクリュー)やミニプレートを一時的に埋め入れて、歯列矯正で歯を動かす力の支点(固定源)にして、歯を効率的に動かす方法です。1990年代後半より、矯正歯科で行われはじめた新しい治療です。近年、外科的知識や経験の乏しい矯正科医が行いトラブルケースが急増しています。「インプラント矯正」も広義のインプラント治療ですから、外科設備が整って、通常のインプラント経験の豊富な歯科医院での施術をお勧めします。

12:インプラント名医って?

 私事ですが、以前都内の出版社から、全国の名医を紹介する本をつくるので、名前を載せて良いか?との依頼がありました。私如きが「名医」だなんておこがましいと思いましたが、折角なので、と承諾しました。そしたら、最後に「先生、掲載料として〇〇万円をお願いします!」と言われて驚いた経験がありました。もちろん、丁重にお断りました。
 後日、例の「名医本」が書店に並んでいたので、見ました。ほとんどの名医は、経歴や実績が名医とは程遠い歯科医師で、ある意味、「迷医」だらけでした。
 世の中の「名医」と呼ばれる(あるいは自分で謳っている)のは凡そ、ビジネスライクな臭いがしてなりません。
 例えば「○○歯科名医巻」、「インプラント○○名医会」、「日本○○名医100選」みたいなのは、選定の基準や、経歴、実績を十分に調べる必要があります。

13:<インプラント費用> インプラント治療の費用はどのくらいかかるの?

 1本につき「300,000~400,000円」が一般的です。ただし、都市部は全国平均より少し高く設定されています。
 インプラント治療は、健康保険が適用されない「自由(自費)診療」です。
 そのため、医院によって料金設定が異なり、医院の環境や、歯科医師の技術、使っているインプラントによって料金が変わります。
 地域によっても差があり、全国の目安としては、300,000~400,000円ですが、首都圏や都市部ではそれよりも少し高く、350,000~450,000円になります。

インプラント治療の内訳を教えてください?

 また、インプラント治療1本あたりの費用の内訳としては、目安としておおよそ下記のようになります。

精密検査・診断料
15,000~50,000円
インプラントを埋め入れる手術代
100,000~385,000円
人工の歯の費用
※オールセラミックなど
100,000~150,000円
メインテナンス
5,000~10,000円

 インプラント治療にかかる費用は、医院によって様々です。診断、手術、また手術後のメインテナンスまで、かかる費用をすべて考慮したうえで、比較・検討されることをお勧めいたします。

(インプラントネットHPより引用)

14:インプラントが失敗する原因は何ですか?

 大きな原因は「力と細菌」です。このバランスが崩れるとインプラントは生着しないか、生着(「オッセオインテグレーション」と言います)しても脱離する事があります。また、上部構造装着後にも破折や動揺等が起こりうる可能性はあります。外科処置で生ずる「腫れ・痛み・しびれ」などの症状は、時間はかかりますが、治る場合がほとんどです。
 埋入した時の全身状態が生涯続くことはありません。患者さんも加齢とともに、感染に対する免疫力も低下します。
 いずれにしても、患者さんも医師も人間ですから100%はあり得ません
 大切なのは、「起こりうる可能性」に対する説明と、少しでも不安があれば、聞いて、調べて疑問を解消しておくことです。

もし、これからインプラントを考えている方で、死ぬまで何もトラブルが起こらず、痛みも腫れも全く生じない手術を期待しているとしたら、「インプラント仙人」でも探して下さい。さらに低価格まで求めるなら、ホームページで「安い、痛くない、腫れない、一生持ちます・・・」等を表記しているクリニックを尋ねたらいかがですか?スピリチュアラーの先生がいて、全く触らずにサイババのような手術をしていただけるのではないでしょうか?

15:インプラントの医院選びのコツを教えてください。

 医院選びのコツは、まず「人間的に波長が合うか」です。いくら設備がよくても、先生と会うのが苦痛となるようだったら止めましょう。インプラントは他の治療と異なり、メインテナンスも含め、長いお付き合いになるので相性、これだけは直観的に判断してください。

他にありますか?

 前述No.07の「専門医」の社会的、学術的のある公益団体の専門医資格も判断基準の一つです。

16:インプラントの検査等で大事なところは?

まず下記の検査は最低限必要です。
  • パノラマ、デンタルレントゲン、歯周検査、口腔内外写真
  • 採血(血液検査)
  • ECG(心電図)、血圧測定
  • CT撮影
以上は必須項目です。これらの検査は一つでも外すことは出来ません。

17:インプラント治療で採血もするの?

 インプラント治療は手術ですから、血液検査をしないクリニックは止めた方が良いと思います。骨に直接穴を開けてチタンという異物を体内に留置するわけですから、一般の歯科治療とはわけが違います。採血により、手術の可否及び術中のリスク、術後のリスク等を検査から診断しなければなりません。また、採血も出来ない歯科医師がインプラント治療するのは大変危険だと思います。採血が出来ないという事は、静脈確保が出来ないという事ですので、万が一の全身管理も出来ないという話です。